好評発売中の「ちくちくしないマフラー」は、最高級品質の超極細羊毛で作ることにより保温性に優れ、手ざわりもなめらかなマフラー。形も通常のマフラーよりコンパクトで、リバーシブルで楽しめるデザインが人気です。
今回は「ちくちくしないマフラー」を生んだ、群馬県太田市のファッションブランド「to touch」とニット製造工場の皆さんがタッグを組む地域ブランド「OTA KNIT」の製作現場を訪ねました。「OTA KNIT」の誕生秘話や、希少な国産ニットでできたマフラーの特徴をご紹介します。
“ニットの町”としての歴史をもつ群馬県太田市へ
地域ブランド「OTA KNIT」を生み出したのはアパレルメーカー
「OTA KNIT」を立ち上げたのは、群馬県太田市のアパレルメーカー「株式会社 マウンテンディアー」代表の山鹿雅明さんとデザイナーの直子さんご夫妻。東京でカジュアルウェアを中心とするアパレルメーカーのブランドチーフを13年ほど務めた直子さんは、同じく東京で海外のファッションブランドに勤めた経験があり、WEBやカタログなど広報にも長けている雅明さんと出会い、独立を考え、雅明さんの地元の太田市へ2人で移り住みました。
11年前にこの場所でセレクトショップをはじめ、その後、直子さんがデザインする新しいファッションブランド「to touch」もその一角で製作を開始したそうです。
「当時は海外製のニットがメインだったので、あまり国内の工場は知らなかったんです。こちらで「to touch」をはじめて、あれ、ニット工場がこの周りにあるぞって(笑)。歴史を調べたら、昔はこんなにあったんだと。ニットが小さいころから好きで得意としていたので、活動とともにニットの比率が増えてきました」と直子さん。
太田市出身の雅明さんも、ニットに関しては「言われてみれば内職している家が多かった」ぐらいの認識だったとか。ニット産業は下請け中心で下支えだったので知られず、さらに太田はSUBARUを中心とした自動車産業が盛んなので、あまりニット産業には目がいかなく、減っていってしまったのではといいます。
「ニット産業の盛んな地元でニット製品を作りたい」という思いを持った山鹿夫妻。まずはお付き合いからと、ニットの製造を工場に依頼していたそうです。歴史ある産地でブランドを作れないかと、最初は各工場のファクトリーブランドの展開を考えていましたが、工場の負担も大きくなるので難しいということに。ただ、山鹿さんたちが「OTA KNIT」というブランド名を使ってデザインすることにはOKが出て、2017年にスタートしました。
徐々に「OTA KNIT」が認知されるにつれ、太田市がニットの産地として知られ、アパレルブランドからニット製品を作りたいと問い合わせも来るようになり、工場も仕事が増えたとか。別注でも産地証明として「made in ota」のネームをつけてくれることもあるそうです。
「うちが工場ではなく、アパレルだからできたと思います」と直子さん。工場1社で始めてしまうとそこで完結してしまいますが、アパレルだと、この商品の話なら得意なこの工場へ、デザインが入るなら直子さんが受け持つということもできるそう。また、1社だけでなく何社かで作っていることが、自分たちも「OTA KNIT」に関わっていると、地域の工場に感じてもらえるといいます。
太田産だからできる♪ お手頃で風合いのいい「ちくちくしないマフラー」
ニットを打ち出せるものを作ろうと、最初に直子さんが考えた「OTA KNIT」のアイテムはマフラー。工場に対応できる機械があって、職人さんの負担も少ないものということを念頭に、色の展開もしやすいマフラーを選びました。
「素材がいいもので、手に取りやすいというのはここでやっているからかなと思います」と直子さん。高級な糸を使っていますが、太田市内で直接やりとりしながらデザインと製造をすることで、高すぎない価格で提供できるそう。
工場が近いので、顔を見てコミュニケーションが取れるのも利点のひとつ。だからこそ、お互いごまかしができないといいます。「朝、工場に寄ってから出勤したり、工場も発送せずに直接、箱を持って倉庫に納品に来たりして。風合いのよさを感じますね。安心感もあります。身に着けるものなので」と日本製、太田産ならではの品質の良さを直子さんが教えてくれました。
気持ちのよさがストレートに伝わる名称の「ちくちくしないマフラー」で使用しているウール糸は、「エクストラスーパーファインウール」と呼ばれる最高級品質の羊毛です。直径15.1~15.5マイクロンの超極細の羊毛は糸の組織が細かく、そのため保温性が高く、ちくちくしない肌ざわりになるといいます。なめらかな手ざわりで、心地いいマフラーですよ。
洋服のアクセントになるドットと無地のリバーシブルマフラー
リバーシブルのマフラーは男女兼用で、ドットと無地の2パターンのデザイン。幅広い年代が使えるデザインです。大きめのドットはかわいいだけでなく、太田市の丸い市章やゆかりのある武将・新田義貞の家紋を連想させ、市民にも親しみがあるとか。ブランドロゴにも活用されています。
マフラーは袋ジャガードで編むことで袋状の2枚仕立てになっており、リバーシブルにしています。極細糸なので、2枚にすることでしっかりすることと、裏表で色が反転したドット柄をきれいに出すためです。袋状なのであいだに空気が入り、保温性も高まります。リバーシブルは洋服によって裏表を変えると印象が違うので、2倍楽しめますよ。
旅行にもぴったりで、使い勝手のいいコンパクトサイズ
15cm×138cmの小ぶりなサイズなのも特徴。持ち運びがしやすい大きさで、旅行に行くときや夜寒いとき用に、丸めてバッグに入れておくのもおすすめです。重さも約100gなので、軽いのも魅力ですよ。パッケージもおしゃれなデザインで、プレゼントにもぴったりです。
マフラーの巻き方も簡単。2つに折って首にかけ、輪っか部分にもう片方を通すだけ。長さが短めなので、ちょうどいいバランスになります。ドットタイプは目がいくのでアクセントに。シンプルな洋服と合わせるのがいいですよ。無地タイプはぐるっと巻くだけでもすてき。コートに差し色をしたいときにおすすめです。お手入れ方法はドライクリーニングがおすすめですが、手洗いだとふわっと仕上がるそう。
「OTA KNIT」を支える最新鋭のニット製造工場へ
今回は「ちくちくしないマフラー」を製造している工場「旭ニット工業株式会社」も訪ねました。雅明さんの地元の高校の先輩にあたる内山聖一さんが代表を務める会社です。「OTA KNIT」のセーターの製造をメインで担当していますが、2年前ぐらいからマフラーもこちらに依頼しています。普段はハイブランドの製造もしており、「技術は一流」と雅明さん。
自動の無縫製編み機「ホールガーメント」を17台所有し、最新技術を使うことで、短サイクルの商品にも対応ができるそうです。最新でも糸に影響のある湿度や温度の調整や製造のノウハウなど、職人ならではの技術がもちろん必要。マフラーはたくさんの針を入れて縫うことで目が細かくなり、上質な糸を使っていることもあって、このやわらかな手ざわりになるそう。
1%を切っている日本製のニットを次世代に残すために
じつは、日本に流通しているニットはほぼ海外製で、日本製は1%を切っているのが現状だそう。今は希少価値の高いものになっています。「ニットのともしびを消すなといつも言っているんですけど、今までのやり方を踏襲するのではなく、最新鋭の機械でやっていかないといたずらに高くなっちゃってね。伝統工芸じゃないんですけれども、そういう風になってしまうと、手作業でやれと言われればもちろんできますが、売れるかどうかということもあります」と内山さん。
「ニットのともしびが消えていなかったことが、太田産の武器になっているんです。これを絶やさずにずっと残していければ、次の世代につながる」と雅明さん。「OTA KNIT」は「made in ota」の付加価値を付けることで、次世代に受け継げるように種まき中です。そんな思いがこもった貴重な国産・太田産マフラーを、今年の冬は身に着けてみませんか。